コーヒーが紡ぐ、焼尻島のだんらんタイム【焼尻流ゆんたく】
今夏、観光で来島されるお客さんを案内する活動を企画しておりまして。
冬は海藻の勉強に時間を費やしていましたが、今は島を案内するため地域資源を探る日々。
島内いろいろなところへ出かけつつ、仕入れた情報と古い文献をたよりに『焼尻案内カード(仮)』なるものを作成しております。(気が向けば今度ブログにします)
こんなの。
そんなこんなでいろんな人とお話しているうち、「ちょっと上がっていきなさい」なんて言ってもらえることもしばしば。
近ごろ誰かのお宅へお邪魔する機会が多くなりました。
焼尻島とコーヒー
焼尻島に住み始めて1年以上、とくに誰かのお宅へお邪魔する機会が増えた最近。うすうす感じていたことがあるのです。
それは……、
焼尻に来てから、コーヒーを飲む機会がめっちゃ増えた!
ってこと。
それもそのはず、用事があってお邪魔する施設、招かれて訪れる誰かのお宅、必ずと言っていいほどお呼ばれするのがコーヒーなのです。
立ち話が弾めば「ちょっと上がって、コーヒーでも飲んでいきなさい」
用事があってお邪魔しても「砂糖とミルクは要るのかい?」
……っていう具合に。
それこそ、若い人からお年寄りまでみんなコーヒー。コーヒーが好きとか嫌いとかいう次元でもなく、それが当たり前のようなフンイキなのです。
寒い冬とかめっちゃうれしい、あったかいコーヒー
屋外で活動する機会が少なくなる冬の焼尻。
必然的に屋内での時間が多くなるため、「誰かの家に遊びに行く」か、「誰かを家に招く」が、この時期の楽しみだと言えます。
※良い写真がなかったのでイメージです。
氷点下の気温に対してあたたかい部屋、インスタントコーヒーをカップに入れ、ストーブの上のやかんから熱いお湯をゆっくり注ぐ……。
島に住んで初めてわかります。これって本当に「焼尻らしい光景」。
それにしても、なぜかいつもコーヒー。
そしてそのコーヒーを片手に、“だんらんする”。
どうやら、この島では定番の過ごしかたなようです。
もっとも、冬に限らず夏は夏でコーヒーが出てきますが。笑
「遠慮しないでつまみなさい」
特に、お年寄りの家に立ち寄ったときは、そのまま「ちょっと上がっていきなさい」と誘っていただくことが多いです。
それだけでもありがたいのに、ふと気がつくとたくさんのお茶菓子。
食べきれないほどのお茶菓子。
そして一言、「遠慮しないでつまみなさい」
時にはお茶菓子だけでお腹いっぱいになることもあります。
そんなこんなで、「いつもごちそうさまです」って気持ちになる一方、「頂いてばっかりで悪いなぁ」っていう気持ちも少々。。
なので、ときどき僕はネットでお茶菓子を大量に注文して、逆に配り歩いたりすることもあります。笑
何気ない会話の中に、「焼尻の魅力」が見え隠れ。
「ちょっと休んでいきなさい」
人が少ない島だからこそ(?)、島の人たちはこういうだんらんタイムを大切にしているのかも知れません。
そう思えるくらい、実はおしゃべりな人が多い印象です。
時として、「焼尻島は閉鎖的だ」とも例えられる側面があるのは事実ですが、関わりかた、捉えかたが少し変われば、実はめちゃくちゃフレンドリーな島民性ではないか……と、最近思います。
そんな何気ない会話の中で、
「昔は島にも芝居小屋があって、東京から劇団が来てたんだよ」
……なんて昔話を聞いたり、
「○○漁は××の仕掛けを使うんだけど、この仕掛けにはこういう意味があって」
……なんて協力隊には想像しようも無い漁師さん目線のお話を聞いたり。
焼尻のイメージとしては一般的な「羊の島」以外の部分、焼尻の魅力が垣間見える瞬間なんかたまりません。
そして、その会話のお供には、コーヒー。
まとめると、コーヒーを飲みながらの“だんらん”は焼尻流ゆんたく
ものすごく沖縄をイメージしやすい画像
こういう時間を楽しむと、イメージとして被るのが沖縄で言うところの「ゆんたく」。
「ゆんたく」……沖縄方言で“おしゃべり”の意味。
その意味が派生して「夜の庭で軽くお酒でも飲みながらしっぽり語る」「静かな場所(海辺とか)で仲間同士のんびり語らう」的なイメージ。
学生のころ、休学して西表島で働いたこともあるのですが、あのときの沖縄生活で一番好きな空気感が「ゆんたく」でした。意味は単なる“おしゃべり”ですが、その場が楽しくて初めて成立するような気がします。
焼尻島で言う“コーヒーを飲みながらだんらん”は、そんな沖縄の「ゆんたく」とダブります。。
言うならば、焼尻流ゆんたくでしょうか。
僕自身、実はそんなにコーヒーが好きではなかったものの、いつしかそんな苦手意識もなくなり、なんだったら味わいながら飲むようになりました。
ただ、コーヒーはあくまで引き立て役。
やっぱりメインは「だんらんタイム」で、そこにたまたまコーヒーがあるだけだと思います。
しかし、「ゆんたく」の意味になぞらえるなら、僕のようにコーヒーを頂く側は、ただコーヒーを飲むだけではダメ。
その時間を楽しくする義務(のようなもの)があると思うのです。たぶん。。笑